『ミリオンダラー・ベイビー』は2004年に公開されたヒューマンドラマ映画。
ボクシングを通して描かれるフランキーとマギーの師弟関係が胸を打ちます。
監督・主演は巨匠クリント・イーストウッド監督。
本作はアカデミー賞で作品賞・監督賞・主演女優賞・助演男優賞の4部門を受賞しました。
多くの賞を受賞した本作ですが、「鬱になる」「後味悪い」というウワサが。
そこで本記事では『ミリオンダラー・ベイビー』は鬱になるのか?後味悪いと言われる理由や尊厳死について解説していきます。
『ミリオンダラー・ベイビー』の作品・キャスト情報
作品情報
原題 | Million Dollar Baby |
公開年 | 2004年 |
上映時間 | 133分 |
ジャンル | ドラマ |
キャスト
監督 | クリント・イーストウッド |
脚本 | ポール・ハギス |
主演 | クリント・イーストウッド(フランキー・ダン) |
出演1 | ヒラリー・スワンク(マギー・フィッツジェラルド) |
出演2 | モーガン・フリーマン(エディ・“スクラップ・アイアン”・デュプリス) |
出演3 | ジェイ・バルチェル(デンジャー) |
出演4 | マイク・コルター(ビッグ・ウィリー) |
出演5 | ブリアン・F・オバーン(ホーヴァク神父) |
『ミリオンダラー・ベイビー』のあらすじ
フランキー・ダンが経営するボクシング・ジムにある日、マギー・フィッツジェラルドという女性がやってくる。
彼女は家族から愛されず、不幸な暮らしをしていた。
フランキーに弟子入りを志願するマギーであったが、フランキーはその願いを断る。
しかし、マギーが熱心にトレーニングする姿や粘り強い交渉により、フランキーはついにマギーの面倒をみることに。
やがて2人には強い師弟関係が結ばれていく。
マギーは試合で結果を残し、汚いやりかたで知られるウェルター級チャンピオン『青い熊』ビリーとの試合をすることになる。
『ミリオンダラー・ベイビー』が鬱になると言われる理由
ここでは『ミリオンダラー・ベイビー』が鬱になると言われる理由を解説していきます。
『ミリオンダラー・ベイビー』が鬱になる理由
・マギーがかわいそう
・マギーの家族がクソ
・フランキーもかわいそう
ではひとつずつ解説していきます。
ネタバレを含みますのでご注意ください。
マギーがかわいそう
これこそ『ミリオンダラー・ベイビー』が鬱になると言われる一番の理由でしょう。
マギーは不幸な生い立ちでした。
しかし、フランキーに弟子入りして努力し、試合で結果を残せるようになってきた。
ボクサーとして名声を得られるはずだったのです。
そんな矢先、マギーはビリーとの試合で全身マヒになってしまい、全く動けなくなってしまいました。
これだけならまだなんとかなります。
しかし、その先には「死」が待っていました。
しかもそれは自らが望んだ死。
家族には愛されないし、全身マヒになるし、泣きっ面に蜂どころではありません。
あまりにも残酷な現実に鬱になってしまう人が多いのだと思います。
舌を嚙みちぎろうとしたシーンは胸が痛くなりますね。
マギーの家族がクソ
マギーの家族はクソでしたね。
特に母親がクソです。
娘であるマギーをなんとも思っていない。
マギーが母が喜んでくれると思って家をプレゼントしたのに、母親は逆に「余計なことをするな」と怒りました。
さらに「笑いもの」だと罵倒する始末。
普通だったら娘を抱きしめて「ありがとう」くらい言うのではないでしょうか。
病院にお見舞いに行ったときもマギーを心配するのではなく、お金のことが心配だったのです。
鬱になるというわけではないですが、怒りがわきますし、やっぱりマギーが不憫です。
フランキーもかわいそう
フランキーもなんだかんだでかわいそうです。
マギーを育てましたが、結果的に彼女を死においやってしまった。
とてつもなく責任を感じているでしょう。
マギーとの師弟関係は強かったですから、余計に責任は重く感じていたと思います。
しかも最後は自分の手でマギーに死を与えました。
マギーと出会い、彼女を育てたことは光栄に感じているはずです。
しかし、その一方で「コーチなどしなければ死ぬことはなかった」と後悔もしているのではないでしょうか。
フランキーのことも考えると鬱になりそうですね。
『ミリオンダラー・ベイビー』は後味悪い?
『ミリオンダラー・ベイビー』は後味悪いと言われています。
後味悪いかは人によるでしょう。
確かに後味悪いとは思いますが、私はどちらかと言うと「胸が痛い」と感じました。
マギーの最期をみとったフランキーは行方をくらまします。
その行動が痛切なドラマを感じさせるのです。
マギーを自らの手で死なせたフランキーの心情は想像するだけで胸が痛くなります。
強い絆で結ばれていた2人だからこそ、大きな苦しみと悩みがあったのではないでしょうか。
『ミリオンダラー・ベイビー』から尊厳死を考える
『ミリオンダラー・ベイビー』は尊厳死について考えさせられる映画にもなっていました。
ちなみ尊厳死とは、
人間としての尊厳を保ったままで命をまっとうすること。
回復の見込みのない状態や苦痛のひどい状態の際に生命維持装置を無制限に使わないなどの対応がなされる。
尊厳死は賛否両論あるでしょう。
個人的に尊厳死はありだと思っています。
その理由として
- 今までできていたことがまったくできない
- 生命維持装置がなければ生きられない
- 人の助けがなければ生活できない
もしそんな状態になったとしら「死んだほうがマシ」だと考えると思います。
生きるのも死ぬのも個人の自由ですし、死ぬまで苦痛を味わうなら今「死」を選んでもいいのではないでしょうか。
ちなみに私は自殺容認派でもあります(自殺を勧めているわけではありません)。
マギーのような状態になったても、なにか目標を見つけて生きようとしている人もいるでしょう。
それはそれで立派ですし、尊敬に値します。
しかし、私は回復の見込みのない状態や苦痛のひどい状態になったとしたら「死」を選ぶと思います。
家族や医師に「死なせてくれ」と願うでしょう。
命に関わることなので、難しい問題ではありますが、尊厳死ついて考えてみてはどうでしょうか。
『ミリオンダラー・ベイビー』の評価
『ミリオンダラー・ベイビー』の評価はどのようになっているのでしょうか。
冒頭ですこし紹介したとおり、アカデミー賞で作品賞・監督賞・主演女優賞・助演男優賞の4部門を受賞しました。
さらにゴールデン・グローブ賞、放送批評家協会賞でも受賞しています。
多くの賞を受賞していることから、本作が高く評価されていることが分かりますね。
では、実際に映画のレビューを見てみましょう。
主人公マギー・フィッツジェラルドの勝利の快感を視聴者に与えながらも、視聴した人間の心を抉る展開を終盤に持っていく。その落差が急すぎて、終盤は目を離すことができなかった。
家族が本当にひどい。初めて見た時もひどい印象だったのだけど、改めて見たらもっとひどかった。ベッドで契約書を拒否してくれたところは最高だった。尊厳死が広く認められる社会になって欲しい。
クリント・イーストウッドの監督作品でも観てみようと軽い気持ちで観たら感動作品でした。素人だった女ボクサーが、世界チャンピオンを目指し、順調に勝ち進んでいく爽快なシーンを見ながら、これで終わるわけないよなぁと疑問を抱きました。
という評価がありました。
感動するといった声が多いですね。
なかには
- マギーの人物としての背景に深みが出ていない
- 薄っぺらい
- 重い話
と批判的な評価もありましたが、全体的に高評価。
映画レビューサイト映画.comの点数は5点満点中3.7と高評価でした。
『ミリオンダラー・ベイビー』は鬱になるかも?
『ミリオンダラー・ベイビー』は人によって鬱になるかもしれません。
ただ、クリント・イーストウッド監督らしい痛切な人間ドラマは必見!
ボクシングシーンはリアリティがあって引き込まれますし、ヒラリー・スワンクはすごくいい演技をしています。
鍛え上げられた体も素敵です。
ボクシングに興味がなくても、引きつけられること間違いなしです。
また、尊厳死についても考えさせられるので、ぜひ本作を観ていろいろと考えてみてください。
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