『ようこそ、わが家へ』は2013年に発行された池井戸潤のミステリー・サスペンス小説。
本作は2014年にラジオドラマ化、2015年に相葉雅紀、有村架純、沢尻エリカ、佐藤二朗らのキャストでドラマ化されました。
主人公、倉田太一が駅のホームで割り込み男に注意したことをきっかけに、陰湿な嫌がらせが始まります。
さらに出向先の会社でも営業部長に不正疑惑が。
果たして倉田は嫌がらせの犯人を突き止め、営業部長の不正も正すことができるのか!?
身近に潜む恐怖と危険を描いたサスペンス小説『ようこそ、わが家へ』について、あらすじと感想、作品の魅力をネタバレを交えて紹介していきます!
目次
『ようこそ、わが家へ』(池井戸潤)の情報
作品情報
著者:池井戸潤
出版社:小学館
初版発行:2013年
ジャンル:ミステリー・サスペンス
冒頭を試し読み
その日、中野にある職場を出た倉田太一は、総武線で新宿まで行き、そこでJR山手線に乗り換えた。もう八時過ぎだというのに外気温は三十度を超したままだ。少し前にどこかの駅で人身事故があったらしく電車が遅れ、束の間の涼を求めたはずの車内は、期待に反する結構な混雑ぶりであった。いつもよりゆっくり目に新宿駅を出発した電車は、まだダイヤが乱れているのか途中で小休止したりしながら次の代々木駅へ向かう。 『ようこそ、わが家へ』本文より
『ようこそ、わが家へ』(池井戸潤)のあらすじ
ある夏の日、会社員である倉田太一は職場を出て、JR山手線に乗り込み代々木駅まで向かう。
代々木駅でドアが開いたところで、入り口付近にいた倉田は一旦、電車の外に出たが、若い男が人の列を無視して割り込んできた。
男の胸の前に腕を突き出し、注意する倉田。
さらにバスを乗り継いで自宅へ帰る途中、先ほど注意した若い男に尾行されていることに気が付く。
何とか男を巻いて帰宅するが、その翌朝から花壇が踏み荒らされるなどの嫌がらせが始まり、その嫌がらせは次第にエスカレートしていく。
一方、倉田の会社では営業部長の不正疑惑が浮かんでいた。
『ようこそ、わが家へ』(池井戸潤)の感想
気になる展開で一気読み
『ようこそ、わが家へ』は陰湿な嫌がらせを受ける倉田家と倉田の出向先、ナカノ電子部品の営業部長、真瀬の不正疑惑を問い詰めていくという2本柱でストーリー展開していきます。
どちらのストーリーも先が気になって一気読み!
まず、陰湿な嫌がらせを受ける倉田家のストーリーですが、犯人を捕まえることができるのか、犯人の正体は一体誰なのかと気になります。
つづいて真瀬の不正疑惑を問い詰めていくストーリーでは、真瀬には一体何を隠しているのか、真瀬が行った不正の真相は?と気になります。
身近な恐怖を描いたサスペンス小説となっているのですが、家族を描いた小説にもなっていました。
と、いうのは執拗な嫌がらせを倉田家は受けるのですが、家族で団結して犯人を捕まえようという小説になっているからです。
見張りをしたり、盗聴器を探し当てたり、犯人像を割り出したり。
嫌がらせをする犯人を追っていく倉田家に注目です。
この小説でも銀行員が出てくるのが池井戸潤らしいですね。
倉田、がんばれ!
倉田はどちらかというと、言いたいことも言えず我慢してしまうタイプであり、出世レースから外れたサラリーマン。
そんな気弱い倉田を応援したくなります。
ナカノ電子部品の営業部長、真瀬にはいつも言いくるめられて終わり。
そんな真瀬に抗おうとする倉田にエールを送りたくなるんです。
また、犯人からの執拗な嫌がらせから必死で家族を守ろうとする姿も応援したくなります。
たとえ、出世レースから外れた気弱いサラリーマンの倉田であっても、一家の大黒柱であるし、二児の父親でもあり、必死に家族を養ってきた。
本作の最後の一文が胸にしみます。
「そして倉田もまた、自分の人生を必死で生きているひとりの人間であることに。」
【ネタバレあり】『ようこそ、わが家へ』(池井戸潤)の結末 犯人は?
ここからは結末のネタバレをしていきます。
一体、倉田家に嫌がらせをしていた犯人は誰であったのか。
その犯人は赤崎信二という名で市ヶ谷にある大手出版社、青嵐社に勤める編集者。
「週刊東京芸能」という週刊誌の編集部に所属しており、肩書きは副編集長。
独身で、中目黒駅に最近できた高級マンションに住み、取材名目でのタクシー代は自由に使えるという人間でした。
一流大学を出てプライド高く、自分だけが正しいと思い込んでいる、自己中心的な男。
赤崎は倉田に注意されて、ついカッとなって仕返ししてやろうと供述しています。
彼の逮捕のきっかけになったのは防犯カメラに映ったバッグでした。
『ようこそ、わが家へ』(池井戸潤)の評価・レビュー
『ようこそ、わが家へ』の評価・レビューを紹介していきます。
レビューサイトでのレビューをいくつかまとめると、
「多くの伏線が張られておりサスペンスとしてもひと筋縄ではいかない。一気に読破できる。感動的な大きなものはないが、そこがかえってこの作品の魅力だと思う。」
「池江戸潤の作品はどれを読んでも面白く今回もスリルとサスペンスを楽しみながら読ませて頂きました。」
「現代人の危うい所を良く捉えた秀作だとおもいます。読後感も爽やかでした。」
という評価・レビューがあり、全体的に高評価でした。
「ハラハラドキドキ」「スリルがある」などの声が多かったですね。
ちなみにアマゾンのレビュー点数は4.0。
個人的にも4.0をあげていい作品だと思います。
『ようこそ、わが家へ』(池井戸潤)のまとめ
先が気になる展開で魅せた良作のサスペンス小説『ようこそ、わが家へ』。
サスペンス小説といっても、人が死ぬとかそういった大きなことはない、日常に潜むありそうな恐怖をここまでおもしろく小説に仕上げたのは、さすが池井戸潤。
エリートではなく、どこにでもいるようなちょっと気弱なサラリーマンの主人公、倉田にはなんだか親近感がわきました。
一気にさらっと読めてしまう小説なのでおすすめです!