『民王』は池井戸潤の政治エンターテイメント小説。
2015年にテレビ朝日で、遠藤憲一、菅田将暉、本仮屋ユイカ、高橋一生らのキャストでドラマ化されました。
池井戸潤にしては珍しい企業ものではなく、政治もの。
しかも、“入れ替わり”を取り入れるなどコメディチックに描かれています。
そのため池井戸潤作品のなかでは一風変わった作品といえるのではないでしょうか。
池井戸潤が描く痛快な政治エンタメ小説『民王』(池井戸潤)について、あらすじと感想、作品の魅力をネタバレを交えて紹介していきます!
目次
『民王』(池井戸潤)の情報
作品情報
著者:池井戸潤
出版社:ポプラ社、文藝春秋
初版発行:2010年
ジャンル:ドラマ
冒頭を試し読み
総選挙は終盤にさしかかっていた。内閣支持率が低迷する中、首相の田辺靖が、突然の辞意を表明したのは、いまからおよそ三週間ほど前の九月一日のことである。「ちょっと話がある。時間をくれないか」首相官邸に呼び出された武藤泰山は、「俺はもう辞める」と田辺から突然切り出され、あまりのことにしばし言葉を失った。 『民王』本文より
『民王』(池井戸潤)のあらすじ
首相の辞任で総裁選が行われ、内閣総理大臣に就任した武藤泰山。
組閣後、国土交通大臣に任命した江見が問題発言をしてしまう。
泰山は発言を釈明するように言うが、江見は頑なに拒否をした。
江見を更迭したことで、野党の蔵本から泰山は責め立てられることに。
蔵本と討論の最中、幻聴が聞こえ出す泰山。
一方、泰山の息子である翔もパーティー中に幻聴が聞こえだす。
やがて2人は体が入れ替わってしまうのであった。
『民王』(池井戸潤)の感想
政治が分からなくても楽しめる
政治エンターテイメントと書いていますが、政治が分からなくても十分おもしろく読むことができます。
僕も政治について詳しくはないので、「政治よくわかんないけど、大丈夫かな」と思ったのですが、その心配は杞憂に終わりました。
冒頭は少し、政治的な話になっていますが、そこからあとはほぼ政治的な話は出てこないので、政治が分からなくても安心して読めます。
むしろ読み終わったあとには政治に興味を持っているかも!?
“入れ替わり”でコメディ要素満載
企業を舞台にした人間ドラマが多い池井戸潤にしては珍しくコメディよりな小説になっていますし、政治を題材にした小説も珍しいのではないでしょうか。
さて『民王』で大きな見どころとなっているのが、“入れ替わり”。
物語の中で内閣総理大臣である武藤泰山と大学生である息子、翔が入れ替わってしまうのです。(2人だけではありません)
その入れ替わってしまった2人のドタバタ劇が笑えます。
突然、内閣総理大臣になってしまった翔は国会で漢字が読めず、「ミゾユー、ジカメン、テイマイ、ハンザツ、ハヤリ労働者」など誤読を連発。
一方、就活生になってしまった泰山は面接先で国会の答弁のように熱く語り、あろうことか面接官を説教してしまいます。
ここが一番笑える!
また、2人を見守る官房長官や秘書の反応も面白い!
『民王』ではユーモアたっぷりの笑える場面にご注目。
【ネタバレあり】『民王』(池井戸潤)のラスト
『民王』のラストは武藤泰山が衆議院を解散する場面で終わります。
「ひとりの政治家として、いま再びー俺は民意を問う。」
という、武藤泰山の熱意。
入れ替わりを経験したことで泰山は「国をよくしよう」という本来の思いを思い出します。
今の政治家も職業政治家になっているのではないかと思いました。
本当に国民のことを考えているのか、自分のため、金のためではないのか。
泰山のように「国をよくしよう」という熱い思いを思い出してほしいものです。
『民王』(池井戸潤)の評価・口コミ
『民王』(池井戸潤)の評価・口コミをまとめてみます。
レビューサイトでのレビューをいくつかまとめると、
「池井戸さんの作品にしては異色ですが面白いです」
「池井戸潤作品にしては、神妙、シリアスな場面が少なくコミカルな作品である。」
「笑える本でした。いつも読んでる内容とは違うので、変な本を買ってしまったと後悔しましたが、読んでいくうちにはまってしまいました。」
など「池井戸潤作品ぽくない」という声が多くありました。
それでも「おもしろい!」という声がたくさん。
ちなみにアマゾンのレビュー点数は3.8という高評価です。
個人的には4.0の作品だと思います。
『民王』(池井戸潤)のまとめ
『民王』(池井戸潤)は池井戸潤らしくない作品ですが、とても楽しめました。
そのなかで政治について考えさせられる部分も多くあります。
本当に日本の将来を真剣に考えて投票しているのか。
政治家のスキャンダルばかり報じて、政治的貢献や手腕についてなぜ報じないのか。
政治家ばかりに目が行きがちですが、私たちにも少なからず責任があるのかもしれません。
日本の政治の在り方について考えるという意味でも必読の一冊になっています。