『百瀬、こっちを向いて。』は中田永一の短編恋愛小説。
表題である『百瀬、こっちを向いて。』は2014年に主演早見あかり、向井理、工藤阿須加、石橋杏奈のキャストで映画化、2016年に舞台化されています。
高校生のピュアな初恋を描いた恋愛小説となっており、内容はとにかく切ない物語。
初めて恋をしたあの頃、ピュアだったあの頃を思い出しながら読んでみるとより一層楽しめるでしょうし、もちろん現役の高校生でも楽しめる作品となっています。
純白の装丁がピュアな恋心をあらわしているようで美しいですね。
思春期の甘酸っぱい恋心を瑞々しい文体で描いた『百瀬、こっちを向いて。』について、あらすじと感想、作品の魅力をネタバレを交えて紹介していきます!
『百瀬、こっちを向いて。』(中田永一)の情報
作品情報
著者:中田永一
出版社:祥伝社
初版発行:2008年
ジャンル:恋愛、短編
冒頭を試し読み
大学卒業をひかえて、すこしの間、故郷へもどることにした。新幹線をおりて博多駅のホームにたつ。寒さで体がふるえた。実家へむかう前に西鉄久留米駅で友人とあうことになっていた。まちあわせの時刻まで三時間あったので天神の町をぶらついていると、神林先輩にあった。 『百瀬、こっちを向いて。』(本文より)
『百瀬、こっちを向いて。』(中田永一)のあらすじ
大学卒業をひかえて、少しのあいだ故郷へもどることにした相原ノボル。
町をぶらついていると、かつてのマドンナだった神林徹子に出会う。
2人は喫茶店に入り、高校生のころの思い出話をする。
高校1年生のノボルは教室で障害物のような存在で、そんなノボルに昔からの知り合いであった先輩の宮崎瞬はある日、ノボルの教室に来て、ノボルを連れていく。
宮崎瞬が連れて行ったのは図書館であり、そこで待っていたのは宮崎瞬の彼女である徹子ではなく、百瀬陽だった。
瞬は二股疑惑を解消させるため、ノボルに百瀬の彼氏を演じて欲しいと頼み込み、百瀬とノボルの偽りの恋人関係が始まる。
『百瀬、こっちを向いて。』(中田永一)の感想
なんと甘く切ない恋愛小説!
それがタイトルにあらわれていますね。『百瀬、こっちを向いて。』
こっちを向いて欲しいのに、好きなあの子は違う人をみている。
切ないけれど、その切ない片思いを的確に表現した素敵なタイトルになっています。
その切ない物語の主人公となっているのが相原ノボルという高校1年生の男子なのですが、このノボルがどうしようもないくらい自信のない男。
自分ことを「人間レベル2」「薄暗い電球のような存在」などと自虐しているくらいで、もちろん女子にも恋にも縁なんてなく、あるのは同レベルの田辺という友達1人だけ。
そんなノボルと恋人のふりをすることになるのが、百瀬陽という美少女で勝気な女子。
地味なノボルとはなにもかも正反対です。
そんな2人が恋人のふりをするぎくしゃくした様子が「百瀬、こっちを向いて。」のおもしろさとなっています。
例えば二人の言い争い。「ナメクジみたいなところが好きって言っておいたよ」「かるく死にたくなったよ」こんな感じで言い争っているのですが、それが滑稽で読み手としては思わずクスリときてしまいます。
しかし、それだけではなくて、頼りなかったノボルが男として成長していく姿も『百瀬、こっちを向いて。』の魅力となっています。
人は恋をすると強くなり、成長を促してくれるのでしょう。
「恋」という魔物を知ってしまったノボル。
そして「恋」という魔物に立ち向かっていくノボルの姿に注目です。
『百瀬、こっちを向いて。』(中田永一)の評価は?
『百瀬、こっちを向いて。』(中田永一)の評価をまとめてみます。
レビューサイトでのレビューをいくつかまとめると、
「なかなか深くてよくできていながら、読みやすく読後印象のとても良いお話です。」
「登場人物、描写、展開、結末、どれを取っても歯痒いくらいに上手くできている。」
「とてもとてもとても、面白い作品でした。」
など高評価の声が多いです。
なかには『百瀬、こっちを向いて。』よりも他の三編のほうがおもしろいという評価もありました。
ちなみにアマゾンのレビュー点数は4.3という高評価!
個人的には4.0の作品だと思います。
『百瀬、こっちを向いて。』(中田永一)のまとめ
この小説は表題の『百瀬、こっちを向いて。』の他にあと『なみうちぎわ』、『キャベツ畑に彼の声』、『小梅が通る』の三編があります。
どの作品も『百瀬、こっちを向いて。』に負けず劣らずの珠玉の恋愛小説となっていますのでぜひ読んでいただきたい!
昨今は恋愛離れなんて言われていますが、やはり恋愛というものはいいものです。
『百瀬、こっちを向いて。』を読んで恋のよさを再認識されてみてはいかがでしょうか。
苦しいことも辛いこともあるかもしれませんが、それ以上のものを恋は与えてくれます。
本作は映画化もされているので、興味がある人はぜひ観てください!
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