『くちびるに歌を』は中学の合唱部を舞台にした中田永一の青春小説。
アンジェラ・アキの『手紙~拝啓 十五の君へ』がもとになった小説です。
小学館児童出版文化賞を受賞した作品でもあり、2015年に主演新垣結衣、恒松祐里、下田翔大、木村文乃のキャストで映画化されました。
合唱部を軸に中学生の葛藤、成長、友情、恋を描いた内容となっています。
中田永一さんの代表作といっても過言ではない作品。
長崎県の五島列島が舞台となっており、彼らの話す長崎弁がなんともかわいらしくていいですね。
本屋大賞4位にも選ばれた『くちびるに歌を』について、あらすじと感想、作品の魅力をネタバレを交えて紹介していきます!
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目次
『くちびるに歌を』(中田永一)の情報
作品情報
著者:中田永一
出版社:小学館
初版発行:2011年
ジャンル:青春
冒頭を試し読み
十字架の下で聖歌を口ずさむ少女たちの夢を見た。厳かな雰囲気と、透明な声。子どもの頃の記憶だ。私が合唱をはじめるきっかけとなった日、それは母の思い出とひとつながりになっている。夜中に目が覚めて、眠れなくなったので、机の前にすわり、手紙を書くことにした。数ヵ月前、まだNコンの練習をしていたときに出された宿題を、ほったらかしにしていたのである。 『くちびるに歌を』本文より
『くちびるに歌を』(中田永一)のあらすじ
長崎県五島列島のとある中学校の合唱部。
その合唱部で顧問をしていた音楽教師の松山ハルコは産休にはいることになったため、代わりの臨時音楽教師として柏木ユリを東京からよびよせる。
柏木ユリはハルコの代わりに合唱部の面倒をみることに。
しかし、その美貌から男子部員が殺到。
女子だけであった合唱部には向井ケイスケ、三田村リクなどが入部し、さらに存在感の薄すぎる桑原サトルも入部することに。
混声合唱としてNHK全国学校音楽コンクール、通称Nコンの長崎県大会を目指すことになった合唱部だが、男女の溝は深まるばかりで関係はギクシャク。
合唱部のゆくえは……。
『くちびるに歌を』(中田永一)の感想
『くちびるに歌を』は中田永一らしさが存分に発揮されている一冊です。
その中田永一らしさとはなにか。
やさしく瑞々しい文体、巧みなストーリー構成、キャラクター、ユーモアで、それは『くちびるに歌を』の魅力にもつながっています。
あたたかい読後感を味わえる本作なのですが、そんな読後感を味わえるのは中田永一のやさしく瑞々しい文体のおかげですね。
本当に言葉のセンスが秀逸!
さらに『くちびるに歌を』のおもしろさを支えているのはなんといっても中田永一独特のユーモアでしょう。
クスッと笑えるところがたくさんあり、中でもおもしろいのは桑原サトルの自虐ネタ。
そんな桑原サトルにも誰にもいえない悩みがあったりするわけで、とても愛着のわく登場人物の一人になっています。
もちろんストーリーだっておもしろい!
散りばめられていた伏線が回収され、合唱後、サトルの兄のため、皆で歌うシーンや桑原サトルの成長した姿には感動がおしよせ、あたたかい気持ちになります。
『くちびるに歌を』の映画と小説の違い
『くちびるに歌を』の映画と小説の違いは大きく分けて4つあります。
- 映画版は柏木ユリがメイン、小説版は桑原サトルと中村ナズナがメイン
- 小説では課題曲と自由曲の2曲があり、自由曲はオリジナル曲をやる
- 小説と映画では柏木ユリの性格が違う
- 映画と小説ではラストが違う
1つ目は映画版は柏木ユリがメイン、小説版は桑原サトルと中村ナズナがメイン。
小説では桑原サトルと中村ナズナの視点が交互に描かれており、この2人が主人公ですが、映画では新垣結衣演じる柏木ユリが主人公で過去のエピソードなどが追加されており、逆に桑原サトルと中村ナズナのエピソードは省略されています。
2つ目は小説では課題曲と自由曲の2曲があり、自由曲はオリジナル曲をやる。
映画は課題曲のみ。
3つ目はめは柏木ユリの性格。
映画ではかなりクールで生徒にツンツンな感じですが、小説はそんなことないですし、生徒と距離が近いような教師です。
4つ目はラストで、映画と小説ではラストが異なっています。
小説では学校を離れてしまう柏木ユリのために合唱をしようとする場面で終わり、映画はフェリーに乗って帰っていく柏木ユリと生徒達の分かれの場面で終わります。
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【ネタバレあり】『くちびるに歌を』のラストは?
くちびるに歌をの小説のラストは卒業式のあと、臨時教師であった柏木ユリが学校を離れるため、彼女のために合唱をするという場面で終わります。
そこで気になるのが、長谷川コトミと桑原サトルが付き合っているのかということ。
断定した表現はありませんが、おそらく付き合っているでしょう。
「へえ?なんで後輩の女の子といっしょにいたのかなー?」という心の声が届く。
後でちょっといろいろ聞かれるかもしれない。という箇所で分かります。
『くちびるに歌を』(中田永一)のまとめ
『くちびるに歌を』は『手紙~拝啓十五の君へ~』がもとになっている小説で、課題曲が『手紙~拝啓十五の君へ~』になっています。
本作を読むと、アンジェラ・アキの名曲を聞きたくなってきます。
ぜひ聞いてみてください!小説の世界観とすごくマッチしていて、普通に聞くよりも何倍も深く味わえるはず。
そして小説を読んだ後は映画もおもしろいのでぜひ観ていただきたいです。
こんなにもあったかい気持ちにさせてくれる小説を読まないなんて損!ですよ。