
『ひらいて』は2012年に発行された綿矢りさの恋愛小説。
内容は女子高生の木村愛には好きな人がいたが、実は彼には長く付き合っている彼女がいて……というストーリー。
常識を超えるぶっとんだ行動を愛はしていきます。
熱い想いは彼女のもとへ……。
少しこじらせた感のある愛ですが、相手のことが大好きだという気持ちはとても伝わってきました。
繊細な心理描写が美しい『ひらいて』について、あらすじと感想、作品の魅力をネタバレを交えて紹介していきます!
目次
『ひらいて』(綿矢りさ) の情報
作品情報
著書 | 綿矢りさ |
出版社 | 新潮社 |
初版発行 | 2012年 |
ジャンル | 恋愛 |
冒頭を試し読み
彼の瞳。凝縮された悲しみが、目の奥で結晶化されて、微笑むときでさえ宿っている。本人は気づいていない。光の散る笑み、静かに降る雨、庇の薄暗い影。存在するだけで私の胸を苦しくさせる人間が、この教室にいる。さりげないしぐさで、まなざしだけで、彼は私を完全に支配する。二年前、高校一年生の体育祭のパレード。 『ひらいて』本文より
『ひらいて』(綿矢りさ) のあらすじ
2年前の体育祭のパレードの時、木村愛は西村たとえのことを意識する。
高校3年生になって再びたとえと同じクラスになった愛は、いつも彼のことばかりを見つめてしまう。
ある日、愛は、たとえが白い便箋のようなものを机の中に入れるところを目撃。
予備校のあと、友達と学校に忍び込むことになった愛は、教室に行き、たとえが読んでいた手紙を彼の机から1通抜き取る。
家に帰って読んでみると、手紙の差出人には美雪という名前があった。
【ネタバレあり】『ひらいて』(綿矢りさ) の感想
大好きという想いが暴走する
主人公、木村愛は地味で哀しい目をした西村たとえに恋をしますが、たとえには中学生から付き合っている美雪という彼女がおり、フラれてしまいます。
普通であれば、すっぱり諦めるか、諦めて2人が別れるのを待つでしょうが、愛はそうしませんでした。
愛はたとえの彼女である美雪に近づき彼女と寝たのです。
「寝た」というのは性的な関係をもったという意味。
常識では考えられないような行動ですが、愛はまだ未熟な高校生であり、熱い想いが暴走してしまう点がどこか切なくやるせない印象がありました。
思春期の一途な思い、抑えきれない激情をこじらせてしまった愛に賛否両論はあるかもしれませんが、個人的には切なく感じてしまいます。
描写が美しい
もともと文章力は高く、描写が美しい綿矢りさですが、『ひらいて』でもその美しさが出ていました。
『ひらいて』では女性同士の性描写があるのですが、イヤらしい感じはなく、まるで芸術品を見ているような感覚でした。
例えるなら美術館で裸婦画や裸婦像を見ているような感じ。
これは高い描写力がなければ、成せない技だと思います。
一部抜粋してみます。
自らの身体をすべて私に任せて、瞳を未知の恐怖にちらちら動かし、しかし従順に刺激に反応して潤みを増してゆく美雪を見つめていると、いままで感じたことのない美雪への独占欲が生まれた。
しかし、『ひらいて』のなかで一番美しいと感じた表現はたとえに対する想い。
大好きだ、大好きだ。
こんな気持ち、愛とも恋とも呼んではいけない。
彼を刺し貫く想いの矢だ。
思春期の女子高生の一途な想いを的確に表現した文章だと思います。
『ひらいて』(綿矢りさ) の意味は?
タイトルにもなっている『ひらいて』の意味はなんでしょうか。
そのヒントは美雪のセリフにあります。
「これからはお互い、心をひらきましょう」
「愛ちゃんにむかっても、ひらいてあげて」
『ひらいて』の意味は『心をひらく』という意味だと思います。
心をひらかなければ受け入れてもらえない。
それをラストで愛は感じたのではないでしょうか。
受け入れてもらった。
その事実が心を満たす。
『ひらいて』は『心をひらいて、受け入れて』という意味が込めらているのだと思います。
『ひらいて』(綿矢りさ) の名言
ここでは『ひらいて』の名言を紹介します。
『ひらいて』の名言
- 正しい道を選ぶのが、正しい。でも、正しい道しか選べなければ、なぜ生きているのか分からない。
- 果てない夢に想いを馳せれば、時間だけがただ過ぎてゆく。
- 自分もだれかのそんな存在になりたい。その人が苦しんでいれば、さりげなく、でも迷わずに手を差し伸べて、一緒に静かに涙を流せるようになりたい。
以上、『ひらいて』の名言でした!
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『ひらいて』(綿矢りさ) の評価・レビュー
『ひらいて』(綿矢りさ) の評価・レビューを紹介していきます。
レビューサイトでのレビューをいくつかまとめると、
「決してリアリティがある設定ではないけども主人公「愛」の心の奥の奥をえぐりだす展開は綿矢さんのオリジナリティがあふれていて引き込まれる部分がありました。」
「感情を細やかに描いていて、文章の上手さが伝わってきた。」
「最高に面白いです。綿谷りささんは内向的な人間の内面を描写する天才だと思います。」
という評価・レビューがありました。
また、「綿矢りさの新境地」という評価も。
ちなみにアマゾンのレビュー点数は3.6。
個人的には3.7の作品だと思います。
『ひらいて』(綿矢りさ) のまとめ
『ひらいて』は繊細で美しい描写と愛の抑えきれない激情でおもしろく読むことができました。
少し刺激のある恋愛小説や思春期の女子高生の熱い想いを描いた恋愛小説が読みたい人にはおすすめ。
綿矢りさの新境地となった『ひらいて』をぜひ読んでみてください!
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