本の感想 短編集

綿矢りさのダークな短編集『憤死』の感想やあらすじを紹介

『憤死』は綿矢りさの短編小説。

『おとな』『トイレの懺悔室』『憤死』『人生ゲーム』の4つの短編からなっています。

4つのストーリーに共通するのはどこか仄暗い『世にも奇妙な物語』のような感じ。

綿矢りさの小説にしては珍しい作風になっているかと思います。

なかでもおもしろいのは『トイレの懺悔室』と『人生ゲーム』。

特に『人生ゲーム』は『世にも奇妙な物語』で放送していただきたい!

今回は表題の『憤死』と一番おもしろかった『人生ゲーム』について、あらすじと感想、作品の魅力をネタバレを交えて紹介していきます!




『憤死』 (綿矢りさ) の情報

作品情報

著書:綿矢りさ
出版社:河出書房新社
初版発行:2013年
ジャンル:短編

冒頭を試し読み

小中学校時代の女友達が、自殺未遂をして入院していると噂に聞いたので、興味本位で見舞いに行くことにした。病室のドアを開けると、ノックからドアを開けるまでが早すぎたのか、佳穂はまだ手鏡を覗いて、私が入るとその手鏡を上掛け布団と自分のパジャマとの間に押し込んで隠した。    『憤死』本文より

『憤死』 (綿矢りさ) のあらすじ

小中学時代の友人、佳穂が飛降り自殺をはかったという噂を聞き、お見舞いに行くことに。

佳穂は金持ちの子で、自慢しいで、子どものくせに選民意識が強く、容姿は魅力にとぼしく、女版の太ったスネ夫のような子だった。

そんな佳穂が好きではなく、むしろ嫌いであったが、私は1人になるのが嫌でくっついていた。

小学生時代のある日、佳穂は飼育当番をサボっていると責められ、飼育小屋まで行くが、様子が変わってしまう。

鳥が威嚇するような鋭い叫び声をあげたかと思うと、飼育小屋の前の新芽の出てきた花壇の踏み荒らし、手に持っていたバケツを小屋の金網に思いきりぶつけるのだった。

【ネタバレあり】『憤死』 (綿矢りさ) の感想

佳穂のキャラが強烈

私の冷めた目線で佳穂を物語るストーリーになっています。

『憤死』はストーリーを楽しむというよりかは、佳穂というキャラクターを楽しむためのもの。

その佳穂というキャラが個性的。

金持ちの子で、自慢しいで、子どものくせに選民意識が強く、容姿は魅力にとぼしく、女版の太ったスネ夫のような子

とあります。

しかも怒った時が凄まじい。

顔を真っ赤にして目を剥き歯を剥き、瞳孔は開ききって光を発し、仁王様そっくりで、天を仰いで宙を殴りまくったあと、くすのきに頭突きをくり返して、金網を揺すり、奇声をあげながらバケツを蹴飛ばすという大暴れっぷり。

その怒ると手がつけられない発狂じみた性格は大人になっても変わらず、命をかけた恋が終わってしまった怒りで飛び降りる。

普通なら悲しい、辛いという感情で飛び降りるのでしょうが、佳穂は怒り狂って飛び降りるという、佳穂の普通じゃない強さというか、たくましさを感じました。

この世に失恋の怒りで飛び降りるという女性がいるでしょうか。

ちなみに憤死とは、激しい怒りのうちに死ぬこと、です。

4つの短編のなかでは人間を観察する鋭さや恋愛も絡んでいたりして一番、綿矢りさらしい作品です。

【ネタバレあり】『人生ゲーム』がおもしろい

『人生ゲーム』は『世にも奇妙な物語』のような不思議な話になっていました。

少年時代にやった人生ゲームのマス目の内容が現実に起こっていくというストーリー。

謎の男の正体が気になったり、これからどんなことが起こるのか?と気になって最後まで惹きつけられました。

奇妙でちょっぴりダークな感じがいいですね。

「既視感がある」という声もありますが、それほど既視感は感じませんでした。


『憤死』 (綿矢りさ) の評価・レビュー

『憤死』(綿矢りさ) の評価・レビューを紹介していきます。

レビューサイトでのレビューをいくつかまとめると、

「それぞれに良い内容でした。綿谷さんの独特の感覚、価値観、感受性という所が随所に見られたと思います。」

「全部少し不思議で怖い話。3つとも面白かったです!怪談レベルに怖かった。」

「どう考えたらいいんやろう。なんか、難しい内容やった。でも時間がたつのを忘れて読んでいました。」

という評価・レビューがありました。

ちなみにアマゾンのレビュー点数は3.1。

低評価だったレビューは「綿矢りさらしくない」「作風が違う」という声がありました。

綿矢りさファンからすると「ちょっと違う」ということなのでしょう。

確かに綿矢りさらしさはないので、そこらへんを期待してしまうと、楽しめないかもしれませんね。

個人的には「こういう綿矢りさもアリ!」だと思うので、点数は3.5の作品だと思います。

『憤死』 (綿矢りさ) のまとめ

今までとは違う不思議でダークなストーリーを描いた『憤死』。

4編ともそれぞれ違ったおもしろさがありました。

今までとは違う作風に好みが分かれてしまいますが、こういう綿矢りさもアリではないかと思います。

『憤死』では“作風の違う綿矢りさ”を楽しんでみてください!



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